エビデンスに基づく医療とコクラン共同計画

津谷 喜一郎,橋本 淳.エビデンスに基づく医療とコクラン共同計画.
Question Now 17:2-10 (1999)

「エビデンスに基づく医療」(evidence-based medicine:EBM)は1991年に登場した用語である。1990年代後半となり、世界各国においてこの考え方が重要視されるようになった。日本では1994年以後、EBMの情報インフラともいうべきコクラン共同計画のネットワークが活動しており、厚生省健康政策局においても、エビデンスに基づいて代表的疾患の治療ガイドラインを作成しようという動きがある。

今回は、日本におけるEBM研究の第一人者であり、医薬品の適応外使用のエビデンスに関する調査研究班を主宰されている津谷喜一郎先生と、EBMを地域医療の場で積極的に実践されている橋本淳先生に、コクラン共同計画の意義、日本での取り組み、および世界の流れなどを中心にお話いただいた。

津谷 喜一郎 先生

東京医科歯科大学難治疾患研究所

橋本 淳 先生

自治医科大学地域医療学
(現・県立愛知病院総合内科部)

コクラン共同計画との出会い

橋本
まず、津谷先生ご自身どのような経緯でコクラン共同計画に関わられたかについてご説明いただけますか。
津谷
1992年に横浜の世界臨床薬理学会の会場で、International Society of Drug Bulletinsの代表であるA.ヘルクスハイマー先生に会ったのがきっかけです。彼はWHOの必須医薬品リストの初期の作成メンバーでもありました。
私は漢方薬や鍼灸などの伝統医学が本当に有効かどうかということについて、国内外の臨床試験の情報を集めて解析したいと考えていました。先生から「今、英国でコクラン共同計画を立ち上げようとしている。例えば周産期、脳卒中、マラリアといったテーマでシステマティック・レビュー(systematic review、系統的評価)をパッチワーク式に進めれば、いずれ医学的設問に対する解答が全て埋まるだろう。君もこの計画に参画しないか」と誘われました。
橋本
それがきっかけでコクラン共同計画への参画を決心されたのですね。そもそもこのプロジェクトはどのような経緯でスタートしたのですか?
津谷
コクラン共同計画は英国で国民保険サービスの一環として始まりました。それが発展して現在では医療技術の世界的な評価プロジェクトになってきています。薬物療法・手術・リハビリテーション・看護・心理療法など医学的介入の効果を評価し、必要な人に届けるものです。エビデンス・レベルの高いランダム化比較試験を中心にシステマティック・レビューを行います(表1)。80年代よりメタアナリシスという手法が開発され、複数の臨床試験データをコンピューターを用いて定量的に処理することが可能となりました。いわば無数の医学情報をフィルターにかけて、質の高いエビデンスの「しずく」を作るのです。その結果は医療関係者・政策決定者・消費者にCDーROMやインターネットを通じて届けられ、合理的な意思決定に役立てられつつあります。

米国医療政策研究局(Agency for Health Care Policy and Research:AHCPR)によるエビデンスの分類(表1)

コクラン共同計画におけるシステマティック・レビューでは、収集した医学論文の研究デザインを重要視する。AHCPRのグレーディングスケールは、平成9年度厚生科学研究「難治性・稀少疾患に対する医薬品の適応外使用のエビデンスに関する調査研究」でも使われた。

  エビデンスの種類
Ⅰa
 
 
Ⅰb
ランダム化比較試験のメタアナリシスによる
(Evidence obtained from meta-analysis of randomized controlled trials)
 
少なくとも一つのランダム化比較試験による
(Evidence obtained from at least one randomized controlled trials)
Ⅱa
 
 
Ⅱb
少なくとも一つのよくデザインされた非ランダム化比較試験による
(Evidence obtained from at least one well controlled study without randomization)
 
少なくとも一つの他のタイプのよくデザインされた準実験的研究による
(Evidence obtained from at least one other type of well designed quasi-experimental study)
よくデザインされた非実験的記述的研究による。比較試験、相関研究、ケースコントロール研究など
(Evidence obtained from well designed non-experimental descriptive studies ; such as comparative studies,correlation studies and case control studies)
専門家委員会のレポートや意見and/or権威者の臨床試験
(Evidence obtained from expert committee reports or opinions and/or clinical experience of respected authorities)
橋本
コクラン共同計画はヒトゲノム・プロジェクトと比較されますが、どのようにして国際的なプロジェクトに発展していったのですか?また、日本での動きはどうなっているのでしょうか?
津谷
1993年末にオックスフォードで第1回国際会議「コクラン・コロキウム」が開かれていますが、私が参加したのは翌年カナダのハミルトンで開かれた会議でした。帰国後、このプロジェクトの意義を感じた人々が集まってネットワーク(JApanese informal Network for the COchrane(コクラン) Collaboration:JANCOC)が作られました。当時はまだ、EBMのコンセプトもあまり知られておらず、啓発活動を積極的に実施しました。
ところで、橋本先生の自治医科大学では地域医療の枠組みの中でEBMについてかなり積極的に実践されていますが、どのようなお考えからですか?

EBMと地域医療

橋本
私たち自治医大関係者の責務は地域医療の向上です。特に初期診療の場でどのような医療を提供していくか、また自分たちの医療行為の質をどのようにして保っていくかが大きな課題です。多くの医師が、田舎に行くと最新の医療から立遅れてしまうという危惧を持っており、そのような環境の中で診療しなくてはならないのは医師にとって大きなストレスです。そこで、現在、愛知県作手村にいる名郷直樹先生がEBMに着目し、その実践が自治医大でスタートすることになりました。
実際に、われわれが見ているありふれた疾患に対する治療法でさえ根拠のはっきりしているものは非常に少ないといわれています。私たちはコクラン共同計画がシステマティック・レビューを行い、利用価値の高い情報源であるコクランライブラリーを提供していることを知り、JANCOCによるシステマティック・レビューのワークショップなどにも参加するようになったわけです。
津谷
自治医大に行きますと、テレビ会議をはじめとする種々のネットワークシステムで情報を交換していたり、世界的にも最先端のエビデンスで地域医療を実践しようという高い意識があって、ある意味ではEBMの本流という気がしました。
現在、世界には15のコクランセンターがありますが、日本を含むアジア・太平洋地域はオーストラリア・アデレート市にあるセンターが統括しています。オーストラリアは国土が広いので、散在している医師にエビデンスの高い最先端の情報を国の施策として提供しようという考えがあり、そのための予算の一部でコクランセンターが創設されました。こうした考え方は自治医大のそれと全く軌を一にしております。
先生はコクラン共同計画の意義をどのようにお考えですか?

図1 コクラン共同計画の役割

コクラン共同計画の役割概要図

玉石混交の無数の医学情報の中から、目的に合致した信頼できる情報を個々の利用者が収集し評価するのは、今日(こんにち)の情報過多の状況下では不可能に近い。そこで、コクラン共同計画では情報の収集と批判的吟味、さらにメタアナリシスを実施して、そのエッセンスを情報の利用者に提供することをその主たるミッションとしている。

橋本
インターネット等で容易に情報にアクセスできるようになりましたが、今はむしろ玉石混交の過剰な情報の中から本当に大切なものを見出すことが重要です(図1)。EBMのステップでは、(1)疑問を定式化して、(2)情報を収集し、(3)批判的に吟味したのち、(4)それを患者の皆様に適用しますが、このプロセスの中で情報の収集と評価に最も労力を要します。しかし、臨床上生じるすべての疑問についてこれを各個人が一人でやるのは不可能です。
私たちも当初はMedlineで文献検索して情報収集していましたが、現在はコクランライブラリーやベスト・エビデンス等の二次情報源を主に活用してお ります。Medlineのようなデータベースから関連性の高い情報を探し、さらにその中から妥当性の高い情報を選んでくるよりも、これらの二次情報源から妥当性、関連性の高い情報を選ぶ方がはるかに簡単だからです。このような情報源を使えば、実際の診療でもコンピューターを使って、患者から疑問が出たとき にその場でサーチして適切な根拠を得ることができます。
私たちは一般臨床医として、エビデンスを診療に役立てるようにしていますが、エビデンスの利用者は臨床医のほかに行政担当者がおります。日本の行政の対応はどのようになっているのでしょうか?

行政の取組み

津谷
薬害エイズとソリブジン事件が契機となって、この数年薬事行政に変革がありました。新たに創設された医薬安全局は、患者保護の観点が明確になり、真に有効 な薬のみ承認し、効かない薬や有害な薬を社会から排除するのがその仕事です。以前の薬務局にあった研究開発振興課と経済課は健康政策局の下に移りました。
1995年に起こった子宮内膜症治療薬の適応外使用による副作用の問題は、行政が「適応外使用」を取り上げるきっかけになりました。その後の動きの中 で研究開発振興課の意向とコクラン共同計画の考え方が一致したことと、丁度JANCOCのネットワークがあったことなどが、医薬品適応外使用についてのエビデンスに関する調査研究プロジェクトをスタートさせたといえます。
適応外使用のプロジェクトでもコクラン共同計画の手法をモデルにしています。まず、(1)どの薬が、(2)どの疾患に対して、(3)何を評価の尺度(endpoint)として、適応外使用されているのか、を決めることが重要です。これは「リサーチクエスチョンの同定」と呼ばれております。
ところで第一線の臨床医が考えるエンドポイントというものはどのようなものでしょうか?

診療の場におけるエンドポイント

橋本
一般に、臨床医が医療行為を決めるときに、患者の症状がどのくらい改善するか、あるいは発症するかも知れない疾患がどの程度予防できるかという見積もりに ついて、余り深く考えていないというのが実感です。エビデンスを診療に役立てる上で重要なことは、患者にどういう影響があるかを評価することですが、疾患と治療薬の組み合わせしか記載のない、マニュアル的な本ではそのような判断ができず、根拠としては不十分です。しかし、現状ではそのような本が診療の根拠になっています。

図2 心筋梗塞の発症リスクとカルシウム(Ca)拮抗薬の関係

心筋梗塞の発症リスクとCa拮抗薬の関係図

患者を臨床的真血管系疾患(CVD)の有無によって層別したうえで、カルシウム(Ca)拮抗薬を投与した場合の心筋梗塞発症リスクについてβ遮断薬を低用量投与した場合と比較し、相対危険率で表した。図中クロスバーは95%信頼区間を示す。データはカルシウム(Ca)拮抗薬の使用が(とくに高用量を用いたとき)心筋梗塞の発症リスクをむしろ高めていることを示している。

(B.M.Psaty et al.:JAMA 1995;274:620-625より一部修正して引用)

津谷
通常、医師はどんな患者に何を使うかを考えても、その結果どうなるということはあまり考えない。例えば血圧を下げておけば脳卒中は減るだろうと考えるが、そこにきちんとしたエビデンスがない場合が多いですね。
橋本
確かに、血圧を下げれば脳卒中も心筋梗塞も減るのではないかと考えますが、実際に効果を測ってみると差がないとか、あるいは逆の結果になってしまう場合もあるということを想定しなくてはならないと思います。例えば、高血圧の患者に日本で最も使用されているカルシウム拮抗薬は、β遮断薬と比較すると心筋梗塞のリスクを増やしているのではないかという報告もあります(図2)。
津谷
近年、生活習慣病などと呼ばれ長期にわたる病気が多くなってきていますが、こうした領域では「真のエンドポイント」と「代用エンドポイント」を明確に分けて考えることが必要です。こうした言葉は90年代に入って使われ始めたこともあり、まだ全ての医師が理解されているわけではないようです。私もエンドポイントなる言葉を折にふれて話すようにしていますが、まだ完全には定着しておりません。エンドポイントという言葉の他に、アウトカムメジャーやアウトカムバリアブル(アウトカム変数)なども使われています。
地域医療あるいはプライマリケアを担当されている先生方はエンドポイントという言葉を理解して使っていますか?
橋本
一般的にはあまり理解されていないと思います。しかし、地域医療の実践の中ではエンドポイントの重要性を実感する事があります。私は、人口1,700人の田舎の診療所で4年間働きました。健診を受診した中高年女性の多くが高脂血症を指摘され、診療所でも多くの方々を治療していました。一方、その地域では毎年1人ずつしか心筋梗塞は起こっておらず、いずれも中高年の男性でした。女性の高脂血症患者は治療したから発症しなかったのではなく、もともと発症しない集団に対して治療していたのではないかと考えました。
その後EBMを通して患者にとって本当にメリットになるアウトカムを考えた医療に触れ、大きく考え方が変わりました。

治験データの医療経済学的検討

津谷
ここで、プラバスタチンに関するスコットランドでの臨床試験(The West of Scotland Coronary Prevention Study ; WOS Study)について説明してください。
橋本
WOSスタディでは、心筋梗塞がプラバスタチンの投与により27%減少したという結果になっています。しかし、欧米におけるこの疾患の罹患率は日本より数倍高く、その違いは治療による予防効果の程度に影響することになります。
最近、臨床疫学の分野でNNT(number needed to treat)という概念が使われるようになりましたが、WOSスタディでは、42人を5年間治療すると1人の心筋梗塞を予防できるという結果になります。
津谷
この結果を日本人に適用した場合、医療経済学的に1人の患者を救うのにいくらかかることになりますか?
橋本
コレステロールレベルが240mg/dLの人達を対象にして試算してみますと、NNTは男性で376人、女性で1,550人となり、心筋梗塞の発症を1人予防するために男性では約1億円、女性で約5億円の薬剤費がかかることになります。
津谷
376人を5年間治療して1人に意味があるということは、残り375人には心筋梗塞の発症を予防する効果はない。しかし、この375人がいないと意味のある1人もいない、ということを示しています。残りの人達への投薬コストを加味すると1人の患者を救うのに1億円以上かかるということになってしまうわけですね。したがって、例えば2,000人の診療を行っている村を想定した場合、1億円の健康保険予算を何に使うか、医療保険分野での「優先順位付け」(priority setting)が重要になってきます(図3)。この「プライオリティ・セッティング」は今後日本の医療のなかでキーワードの一つとなるでしょう。
医薬品の適応外使用のエビデンス評価について私が行政より依頼されたのは、EBMの手法によりエビデンスをグレード付けし、レベルが高いものならば臨床試験を行わなくても承認の方向へ、中位なら臨床試験を、低いか無いならばむしろ基礎研究を、といったプライオリティ・セッティングを行う判断材料にするためです。
ところで、コクラン共同計画に関する国際会議が「コクラン・コロキウム」として毎年秋に開催されています。1998年11月のボルチモアでの会議には、橋本先生も参加されましたが、初めて参加されてどんな印象を持たれましたか?

図3 高脂血症患者1人の治療費

高脂血症患者1人の治療費説明図

血清総コレステロール240mg/dLの高脂血症患者が2,000人住んでいる仮想の村において、全患者を治療する場合としない場合で5年の間に心筋梗塞を発症する患者数を比較して、患者1人の発症予防に要する費用を算出した。その結果、男性では1人の発症予防に1.4億円、女性では6.8億円かかることになる。
(橋本淳ら:動脈硬化 1998;26:157-164のデータをもとに作成)

コクラン国際会議

橋本
第1印象は新たな参加者を積極的に受けいれてくれるということです。コクラン共同計画の内容やライブラリーの使い方も初めての参加者のために積極的に宣伝していました。第2には、医薬品の消費者つまり患者を強く意識しているということです。患者がいろいろな分野で演壇に立ち、大事な判断の場では必ず参画できるように配慮されていました。
津谷
日本の学会のシンポジウムでも、最近は医師・行政・企業に加えて患者の立場で話す機会が設けられてきていますが、患者はいくらか臆して話しているようなところがあります。
コクラン・コロキウムでは患者も堂々と発言しているのが印象的でしたね。
教育セッションとか将来計画を立てるとかいろいろなセッションがありますが、そのうち私が特に印象に残ったのは、「エビデンスのレベル」(level of evidence)および「お勧め度」(strength of recommendation)というものです。私が行なっている適応外使用のプロジェクトに非常に参考となる考えでした。研究デザインから判断してエビデンスのレベルが高いからといってすぐ「これを使いなさい」といえるものではなくて、エビデンスのレベルとその治療を推奨するかどうかは別の次元の問題なんだということです。その方向性やニーズ、これには患者の好みや医療経済学的な評価も考慮に入れて判断しなければいけないわけです。

日本のEBMの現状

津谷
日本ではEBMといっても日本人を使ったエビデンスの高い情報があまり多くないので、レベルの低いエビデンスでどうするか、あるいは海外にある高いエビデンスを日本の現場でどう受けとめて使うかという方法論も重要です。
臨床医や行政がデータを使うことを考えると、やはり日本人を基にしたエビデンスがあるべきです。また外国のエビデンスを日本人に使うだけというのは海外からの移植臓器を用いるのと同じ倫理的な問題があるとも思います。
橋本
治療については良くデザインされたランダム化比較試験が最も信頼できるエビデンスですが、このような質の高いエビデンスがない場合には、臨床医としてはそれ以外であっても今ある情報の中から有効性と副作用のバランスを判断する手法を検討する必要があります。

まとめ

津谷
日本では、エビデンスの基本になる臨床試験について医学界と一般市民の双方の認知をもっと高めていく必要があります。欧米ではコクラン共同計画に関係して、患者グループの動きがあります。例えば、乳癌患者グループは「外科療法と放射線療法でどちらが有効なのか、という未解決で重要な問題に対してきちんと回答しなさい」と政府や公的機関に働きかけています。日本でも、一般国民がきちんと監視していて、そこに国の研究費をつぎ込むという具合に世論が動いてくれるといいなと思います。
アスピリンなどの予防投与が保険で認められないとか、適応が取れないとかなどの話がありますが、市民からの問いかけに対して、行政・医療従事者・企業などがその決定プロセスを明示したうえで、答える必要があります。
EBMというのはエビデンスを「つかう」ユーザーサイドに立った考え方ですが、エビデンスを「つくり」「つたえる」側の臨床試験やコクラン共同計画も大 切です。私達の次の目標として、日本コクランセンターを作りたいと考えていますが、当面は実質的な仕事を進めていくつもりです。現在コクランライブラリーに日本の臨床試験が殆ど収載されていません。これを収載するプロジェクトを1998年から開始しました。この機会に多くの方々にコクランライブラリーにふれるなどして、コクラン共同計画に関心をもっていただきたいと思います。

EBMとコクラン共同計画に関する用語解説

津谷 喜一郎,橋本 淳.エビデンスに基づく医療とコクラン共同計画.
Question Now 17:8-9 (1999)

■ACPジャーナル・クラブ ACP Journal Club:  科学的に信頼できると判断された原著論文のみをまとめた二次情報誌の1種(http://www.acponline.org/journals/acpjc/jcmenu.htm)。CD-ROM版でも提供されている。ACPは"American College of Physicians"に由来する。
■JANCOC (JApanese informal Network for the COchrane(コクラン) Collaboration):   日本で1994年11月5日に発足したコクラン共同計画の主旨に沿ったネットワーク。コクラン共同計画を日本で実践・推進する非公式なネットワークで、代表は津谷喜一郎先生。インターネットのアドレスはhttp://cochrane.umin.ac.jp/
■アウトカム Outcome:  治療や予防などの医学的介入から得られる全ての結末。余命の延長、死亡率の低下、発症の減少、副作用の減少、QOLの改善などの有益なものに加えて、余命の短縮、死亡率の増加などの有害なものも含まれる。
■アーチー・コクラン Archiebald Cochrane:  イギリスの医師・疫学者(1909-1988)。個別の医療行為ごとに全てのランダム化比較試験が批判的にまとめられていないことについて、問題提起をした。
■医学的介入 Intervension:  患者に影響を及ぼす全ての医療行為。投薬、外科手術、検査、看護、教育、サービスなど。
■エビデンス Evidence:  医学的介入の有用性を証明する科学的根拠。主に臨床試験のデータを指す。
■エビデンスのレベル Level of evidence:  科学的根拠の水準を示し、通常、メタアナリシス>ランダム化比較試験>比較臨床試験>コホート研究>ケースコントロール研究>ケースシリーズ>ケースレポートの順番にレベルが高い。EBMでは通常、ランダム化比較試験以上のレベルの臨床情報をエビデンスとする。
■エンドポイント Endpoint:  医学的介入の意義を評価するために任意に選んだアウトカム項目。評価の物差しは死亡、QOLの変化、副作用の発現など。  血圧、血糖値、腫瘍サイズなどの物差しは、患者にとって真の利益となっているかわからないため、脳卒中、心筋梗塞の発症や死亡などの、いわゆる真のエンドポイントtrue endpointに対して代用エンドポイントsurrogate endpointと呼ばれる。
■お勧め度 Strength of recommendation:  ある医療行為を特定の患者に適用すべきかどうか、を示す指標。エビデンスのレベルに加えて、効果の大きさ(magnitude of effect)や病気の社会的重みなどが加味されて判断される。
■患者の好み Patient preferance:  ある医療行為を患者が受けたいと考えるかどうかということ、または患者が好む医療行為。
■コクラン共同計画 Cochrane(コクラン) collaboration:  医療行為の利点と危険性について、レベルの高いエビデンスを系統的に評価して提供する国際プロジェクトで、A.コクランを記念して命名された活動。現在世界に15のコクランセンターがあり、活動している。
■コクラン国際会議 Cochrane colloquium:  コクラン共同計画に関する国際会議で、1993年末に第1回の会議がオックスフォードで開催され、以後毎年秋に開催されている。1999年は10月にローマで開催される(http://www.areas.it/Roma99/)。
■コクラン・ライブラリー Cochrane library:  コクラン共同計画を通して行った、疾患別・治療法別のシステマティック・レビュー結果を掲載したライブラリー。オフライン(CD-ROM)およびオンライン(http://www.update-software.com/coweb/default.htm)の両方でデータが提供されている。
■システマティック・レビュー Systematic review:  対象となる医療行為に関する論文を、予め定められた基準により系統的・網羅的に収集し、批判的な吟味を行い、要約すること。
■信頼区間 Confidence interval:  特定の医療行為の効果について、一定の確からしさ(95%、99%など)で真の値が存在すると期待される範囲。
■治療必要症例数 Number needed to treat(NNT):  1人の患者に治療効果を発現したり副作用を消失させたりするために、何人の患者に対して当該医療行為を行う必要があるかを示す指標。この数字が大きい医療行為では、1人の利益のために多数の患者を処置しなければならず、効率の悪い医療行為ということになる。
■比較臨床試験 Controlled clinical trial(CCT):  医学的介入群と対照群を割りつける際、コイン、曜日、カルテ番号などの準ランダム化(quasi-randomization)を用いるもの。
■メタアナリシス Meta-analysis:  複数の臨床試験データを統合して評価する統計学的手法。
■ランダム化比較試験 Randomised controlled trial(RCT):  被験者を医学的介入実行群とその比較対照群に、乱数表やコンピューターなどを用いてランダムに割りつけ、その介入の効果を評価する臨床試験の方法。比較群としては無治療、偽薬、標準治療などがある。