01 Keyword Adherence

時代は「服薬アドヒアランス」重視へ時代は「服薬アドヒアランス」重視へ 時代は「服薬アドヒアランス」重視へ

どんなに効き目が確かな薬でも正しく服用されなければ効果は望めません。そのため現在では患者さんが医師や薬剤師などの医療者とともに治療方針の決定に参加し、服用しやすい薬や環境を選んで自ら正しい服用を続ける「服薬アドヒアランス」が重要視されています。服薬アドヒアランスが良好であれば治療の経過にも良い影響を与えます。「飲みにくい」「1日に何回も飲むのが面倒」といった心理的ハードルを下げ、飲み忘れなどを防ぐためにも、患者さんが利用しやすい製剤開発を多くの製薬会社が進めています。もちろん、帝人ファーマもこの概念を重視しており、気道潤滑去痰剤「ムコソルバン」を中心に、患者さんに合った「飲みやすさ」を提供しています。とくに「ムコソルバン」は子どもから働き盛りの成人、お年寄りまで幅広い年齢層を対象とするため、錠剤、液剤、シロップ、ドライシロップ、徐放性カプセルと複数の剤形を開発してきました。

02 Keyword Small

1日1回服用の小型錠 1日1回服用の小型錠 1日1回服用の小型錠

その中でも「Lカプセル」(1996年発売)は、1日3回が当たり前だった去痰剤の服用頻度を1日1回に抑えることを目的に開発されました。夕食後に服用すれば、気道の機能が低下する夜間から早朝に血中濃度がピークに達します。

このカプセルは約18mm×約6mmと標準的なサイズでしたが、さらに飲みやすい去痰剤を開発すべく、全国の医師300人から医療現場のニーズを丹念にヒアリングしました。その結果、服薬アドヒアランスを高める要素として「小さなサイズ」で「服用回数が1日1回」で済む「錠剤」の評価が高いことがわかったのです。そこで1日1回の服用で済むLカプセルの機能を受け継いだ直径7.5mm×厚さ6mmの小型錠剤をターゲットに、新たな開発がスタートしたのです。

03 Keyword Originality
独自の製剤技術
独自の製剤技術
独自の製剤技術

小型の錠剤を実現するために、錠剤を構成する顆粒に独自の工夫が加えられました。その技術ポイントは3つ。まず「顆粒の一体化」です。速やかな薬効を発揮する速放性顆粒と、持続的な薬効を発揮する徐放性顆粒の2種類を、成型を助ける賦形剤とともに1つの顆粒にしました。大きさや重さの異なる顆粒は製造中に不均一になりやすいという課題がありましたが、複数の層による一体型顆粒にすることで成分の偏りなく安定した生産ができるようになりました。次に「顆粒の小型化」です。機能の一体化によって顆粒が大きくなり、そのままでは錠剤の目標サイズをオーバーする恐れがありました。そこで顆粒をコーティングしていた核となる粒子を小さくし、主薬層の成分比をコントロールして添加剤を少なくしました。これによって顆粒の減量を実現し、錠剤の小型化が可能に。さらに錠剤化の際かかる約1tもの圧力に負けない「耐圧縮性」を付与し、ついに小さくて安定した機能をもつ「L錠」が誕生しました。

04 Keyword Enthusiasm

技術者の熱意 技術者の熱意 技術者の熱意

とはいえ上市までには多くの困難がありました。製薬技術研究所では製法や試験方法など、さまざまな角度から試行錯誤を重ねました。検討された処方は100を超えます。実験室では合格と考えられた製剤がLカプセルと同じ血中動態が得られなかったり、実際の生産機で試作をするとバラツキが出たりと、すぐには思い通りの品質を実現できませんでした。交替で昼夜の試作実験を行ったことや、外部のテスト施設からバトンリレーのようにサンプルを運び、その分析結果を数時間で実験現場に伝えたことも。さまざまなハードルにひるむことなく、常に前を向く研究者たちの姿勢は実験に携わった他社の方にも驚かれるほど。こうした熱意が、ユニークな製剤を生み出す原動力にもなっています。

05 Keyword Voice

医療現場の声に耳を傾けて 医療現場の声に耳を傾けて 医療現場の声に耳を傾けて

医薬品の開発にあたっては、医療現場のニーズを的確にとらえ、研究と営業など社内の多くの部署が目標の実現に向けてともに取り組むことが大切です。今後はさらに帝人グループ全体で保有する高機能素材やITなど異なる分野の製品・技術を融合させ、より優れたソリューションを提供したいと考えています。すでに医薬品技術と素材技術を融合させた医薬品として、止血・接着のための開発を推進するなど具体的な取り組みが始まっています。患者さんをはじめ医療現場の声に誠実に耳を傾け、社内外の幅広い交流の中で新たな技術を育てるヘルスケア事業。これからも従来にない製品づくりに向けて果敢にチャレンジを続けていきます。