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5 導入の手順と条件設定
1)患者への説明
  本療法は患者の理解と協力がないと成功は難しい。従来の人工呼吸療法以上に十分な説明が必要である。「機械の補助なしでは換気が不十分である」、「誰しも、最初は不快であるが、2〜3日でなれる」、「不快であれば、いつでも外せる」、時には「この療法がうまく行かなければ、挿管しなければならない」と言う必要があることもある。
2)機器装着の手順
  (慢性期で時間的余裕がある場合)

@本療法に対する説明を行う。
A機器を組み立ててからベットサイドに運ぶ。
Bマスクの種類を選択する。
Cマスクを人工呼吸器につながずに、マスクを患者の鼻につけて感触を確認させる。
DSpO2>90%を保つように十分な量の酸素を流す(パルスオキシメータでモニタリングする)。
Eマスクを人工呼吸器につなぎ、運転する。まずマスクを患者の手にあて、次に頬にあて、「鼻から吸って、鼻から吐くように」指導し、2〜3呼吸だけ吸わせる。
F患者が納得したら、5分程度吸わせる。この間は、キャップを装着せず、医療者が手に持ち、患者がいやがればすぐ外す。あるいは、患者自身に持たせて練習させても良い。口を開けると、流量が増え不快であることを説明するが、口を閉じることを強制する必要はない。
G少しずつ時間を延ばし、日中に2〜3時間続けられるようになれば、夜間就寝時に使用する。

 このプロセスが、すぐにできる症例もあれば、一週間以上かかる症例もある。
3)条件設定

@処方圧の設定

  処方圧の決定は、患者の受容と血液ガス値を検討し、吸気圧(IPAP圧)と呼気圧(EPAP圧)を調整する。一般的に、気道抵抗が高い場合や酸素化の改善には、EPAP圧を上げ調節する。炭酸ガスを下げるために換気量を大きくしたい場合には、IPAP圧を上げ効果を見る。
  EPAP圧は、あまり低くすると呼気の再吸入量が増加し換気効率が悪化するので、4cmH2O程度から開始する。しかし、呼気抵抗に対し不快感を強く訴える場合は、圧に慣れるまでの間はEPAP圧を2cmH2O程度に設定すると導入が容易である。
  IPAP圧は、慢性期の導入では弱め(6〜8cmH2O程度)から開始し、徐々に上げていくことが多い。しかし急性期や、症例によっては慢性期でも、いきなり高いIPAP圧から始めたほうが、患者も効果を認識しやすくうまく導入できることもある。
  胃へ空気が漏れ、腹部膨満感が強くなることがある。あるいは、耳鳴り、耳痛が出現することもある。これらの患者が耐えられる範囲いっぱいの圧が、IPAP圧の上限となることが多い。

A呼吸数の設定(Tモード、STモード)

  Tモードでは、患者の自発呼吸に近い回数に設定し、患者が同期できるまで、粘り強く励まし、状態の改善に従って調整を繰り返す。
  STモードでは、バックアップのための呼吸数の設定を、通常の呼吸数より2〜3回少なめにすると、コンプライアンスが良好な場合が多い。

B IPAP時間の設定(Tモード)

  Tモードの場合は、IPAP時間の設定(I/E比の設定)が必要である。一般的に1回の呼吸サイクル時間に占めるIPAP時間は50%以下に設定する。

C最大・最小I PAP時間の設定(Sモード、STモード)

  NIPネーザルでは、患者の自発呼吸に同調するSモード・STモードでも、IPAP時間の範囲が調整できる。
  最大IPAP時間は、開口などによって吸気終了を検出できない場合に、設定した最大IPAP時間に達するとEPAP圧に切り替わる。患者の自発呼吸に近い最大IPAP時間を設定しておくと、患者に負担の少ない換気パターンを作ることができ、睡眠を妨げることも防げる。
  最小IPAP時間は、患者の自発による吸気が短い場合や、吸気流速が遅い場合でも、設定した時間分のIPAP時間を確保し、最低限の換気が確保される。

4)加温加湿器の併用
  患者が鼻・口・喉の乾きを訴える場合は加温加湿器を併用する。

5)「導入チェック表」
  巻末に「導入チェック表」を掲載する。導入時の処方決定や観察にご活用頂きたい。

症例提示

■慢性期導入症例
症 例: 71歳、男性
既往歴: 昭和24年肺結核
現病歴: 62歳頃から労作性呼吸困難(H-J 2度)が出現。平成7年5月から肺結核後遺症による慢性呼吸不全にて在宅酸素療法開始。平成11年1月頃から安静時の血液ガス所見でPaCO2レベルが上昇傾向( 50mmHg→ 65mmHg)を認めたこと、またパルスオキシメータで終夜SpO2をモニターしたところdesaturation(図5)を認めたため、4月1日よりNIPPV導入目的のため入院となった。

導入の実際(図6)
初日は、主にマスクフィッティングを行い、その後Sモード・IPAP圧9cmH2O・EPAP圧4cmH2Oで1時間程度練習。翌日からは、IPAP圧を10cmH2Oにアップし、日中に3時間程度実施した。5日目から同条件で夜間就寝時の使用とし、SpO2モニターで夜間のdesaturationをチェックしながら、徐々にIPAP圧をアップした。IPAP圧12cmH2Oで夜間のdesaturationを認めなくなったため(図7)、同条件で夜間就寝時の使用とした。

ポイント
慢性期導入のポイントは、動機づけである。本症例は、夜間のdesaturationの原因が、低換気によるものであることを、図5を使って説明した上で導入を開始した。慢性期導入の場合、患者の受容と効果をみながら徐々に設定を変更していくことが多い。
図5 SpO2モニター/NIPPV導入前


図6 71歳、男性、肺結核後遺症


図7 SpO2モニター/NIPPV導入後



■急性期導入症例
症 例: 71歳、女性
既往歴: 特記事項なし
現病歴: 69歳頃から労作性呼吸困難(H-J3度)が出現。平成10年4月から肺気腫による慢性呼吸不全にて在宅酸素療法開始。平成10年6月終わり頃から発熱・膿性痰が出現し入院。意識障害、高炭酸ガス血症を認めたため、7月8日よりNIPPVを開始した。

導入の実際
図8に酸素流量、NIPPV条件設定値、血液ガスの推移を示す。
NIPPVはSモード・IPAP圧13cmH20・EPAP圧4cmH20で開始したが、同調性が悪かったためモードをTモードへ、IPAP圧を18cmH2O、呼吸数20回に変更した。しかし、高炭酸ガス血症が持続し、意識レベルの改善も悪いため、IPAP圧を20cmH2Oに変更。その後、意識レベル・血液ガス所見も改善した。翌日には血液ガス所見が更に改善していたためIPAP圧18cmH2Oへ変更、退院前からは自発モードでのトリガーが良くなったため、モードもSTモードへ変更した。

ポイント
急性期導入の場合、本症例のように患者の自 覚症状、血液ガス所見などをチェック(設定 を変えて30分〜数時間後に血液ガス測定) しながら、頻回に設定条件を変更する必要が ある。

図8 71歳、女性、肺気腫


Q&A

Q1/導入時のチェックポイントは?
A1/ 一番のチェックポイントは、人工呼吸 器との同調である。モニタリングを工 夫して実施している施設もあるが、モ ニタリングシステムがない場合、同調 しているかどうかは、胸郭の動き・人 工呼吸器の作動音・患者の自発呼吸を よく観察し判断する。



Q3/Tモードの使用時のコツは?
A3/ 患者の呼吸パターンをよく観察し、そ の呼吸パターンに合うような人工呼吸 器の設定(呼吸回数、吸気呼気比など) を行う。そして、症状の改善に伴う呼 吸数の減少など、患者の呼吸パターン の変化に応じて、人工呼吸器の設定 (モードも含めて)も変更する。


Q5/気管切開患者にNIPPVを導入するときのコツは?
A5/ 気管チューブをレティナ((株)高研製) などの気管ボタンに変更し、エアウェ イキャップ(栓)をつけて気管切開口 を塞いだ上でNIPPVを実施する。 NIPPVの圧が高いと、エアウェイキャ ップが飛ぶことがある。このような場 合、レティナ本体とエアウェイキャッ プを縫合するか、テープで固定するな どの工夫が必要である。 NIPPVがうまく導入でき、分泌物など の問題が少なく気道確保の必要がない 場合には切開口を閉じることを検討す る。


Q6/挿管下人工呼吸からのNIPPVへの移行の方法は?
A6/ 患者の状態(慢性期か急性増悪期か) により導入の方法は異なる。すなわち、 呼吸性アシドーシスを認めない程度の 高炭酸ガス血症の場合には、慢性期に 準じて導入を行う。逆に、呼吸状態、 意識レベルの低下、代償されていない 呼吸性アシドーシスが認められる場合 は、急性期に準じてNIPPV導入を行う。

Q2/モードの選択は?
A2/ 症例に応じて様々なモードを使いこなせ るのが理想であるが、選択に迷う場合は、 まず自発モード(SモードまたはSTモ ード)で導入する。吸気呼気ともに患者 の呼吸に良くトリガーし、人工呼吸器と 同調している場合は、変更する必要はな い。トリガーが悪い場合や、十分な換気 効果が得られない場合は、Tモードに変 更を試みる。


Q4/至適圧の設定は?
A4/ IPAP圧は患者の受容と効果(自覚症 状・血液ガスの改善など)をみながら 設定する。一般に患者の安定時の血液 ガス値を目標とするが、当院の導入時 および導入後の血液ガス値は図9のと おりである。

図9 導入前後のPaCO2値(酸素吸入下)

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