Keyword 01 Foresight

痛風に着目した先見性 痛風に着目した先見性 痛風に着目した先見性

新薬のテーマになった高尿酸血症。これは血中の尿酸値が7.0mg/dLを超える状態です。尿酸は、肉や魚など食品由来や細胞の新陳代謝、エネルギー消費によって生まれたプリン体が分解されたものです。尿酸の産生と排泄のバランスが崩れると、血液中に過剰に残り、結晶化して体内に沈着し始めます。関節にたまると痛風、尿路なら尿路結石、腎臓であれば腎障害を引き起こす場合があります。さらには糖尿病や心筋梗塞、脳卒中などのリスク要因になることも知られています。

現在は65歳以上の男性の31.4%が痛風で通院*していますが、帝人ファーマで痛風・高尿酸血症治療剤の研究が始まった1980年代には、まだ注目度の低い病気でした。この競合が少ない点に、開発者はチャンスを見出します。

*厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査」

Keyword 02 Researcher

プロジェクトを支えた研究者 プロジェクトを支えた研究者 プロジェクトを支えた研究者

開発を提案した当時は『メカニズム自体に目新しさがない』と、社内では優先順位の低いテーマとされ、理解が得られませんでした。ただ、痛風の潜在患者は多く、食習慣の変化から今後は痛風に悩む患者さんの声がクローズアップされるだろうという意見もあり、プロジェクトは2年間という期限付きで、ようやくスタートに漕ぎつけます。

当初のプロジェクトメンバーはわずか1名。多数の化合物を検証しましたが、納得のいく結果は期限が近づいてもなかなか得られず、開発を断念することも頭をよぎりました。しかし、テーマを支持して自由意志から協力してくれる研究者の仲間がいました。

共同実験や熱い議論を繰り返す中で、1991年、ついに強い活性を持つ化合物「フェブキソスタット」の合成に成功します。その後、有効性の検証、安全性や品質を確認する試験を経て、1996年に臨床試験へ。プロジェクト開始から8年、新薬「フェブリク」が承認取得へと動き出したのです。

Keyword 03 Commendation

研究への労い 研究への労い 研究への労い

「フェブリク」は、尿酸を体内で生成する酵素の働きを阻害する尿酸生成抑制薬です。痛風だけでなく、合併症のない高尿酸血症のみの方も服用が可能です。また医療者が扱いやすい投与回数や用量を目指しました。こうした痛風・高尿酸血症治療への貢献に対し、2012年3月に日本薬学会から「創薬科学賞」を、翌月には文部科学大臣表彰において「科学技術賞(開発部門)」が授与されました。さらに2015年の全国発明表彰では「内閣総理大臣発明賞」と「発明実施功績賞」をダブル受賞。いずれも開発者らが表彰に臨み、長きにわたる苦労が報われた喜びを分かち合いました。

日本薬学会・創薬科学賞を受賞

同賞は、医薬品の創製と薬学の応用技術の開発において、医療に貢献する優れた研究業績を表彰するもので、研究の独創性や医薬品の新規性、有効性、安全性、海外開発・販売の状況などが評価の対象となります。当社初の本賞受賞となりました。

文部科学大臣表彰・科学技術賞を受賞

世界的にも治療薬が少なかった領域で新しい選択肢を提供し、実用化した点や、日本発の大型新薬として導入され、国内の医薬産業や基礎医学の発展に寄与した点が認められ、本表彰につながりました。

全国発明表彰「内閣総理大臣発明賞」を受賞

日本の科学技術向上と産業の発展に寄与するために創設され、多大な功績を挙げた発明・考案・意匠や、今後大きな功績を挙げることが期待される発明などを表彰するものです。2015年の表彰において、フェブリクの発明者が「内閣総理大臣発明賞」、発明の実施功績者として、当社社長が「発明実施功績賞」を受賞しました。

Keyword 04 World Expanding

世界117の国と地域へ 世界117の国と地域へ 世界117の国と地域へ

海外への導出も進んでいます。2016年3月現在、欧米やアジアなど117の国や地域と独占販売契約を結び、そのうち57カ国で「フェブリク」が販売されています。1999年の米タップ・ホールディング社(現タケダ・ファーマシューティカルズ・ノースアメリカ社)を皮切りに、2003年に仏イプセン社、その翌年には韓国SKケミカル社などと続々と締結。2009年には「ULORIC」(ユーロリク)の販売名で米国での販売が開始されました。

骨・関節、呼吸器に続いて、帝人ファーマの第3の領域として育った代謝・循環器領域。世界中の患者さんのQuality of Lifeの向上に貢献することを目指していきます。