これまで世界の経済発展の中心だったのは、大量に製品を作り、破棄する「リニアエコノミー」でした。その結果、気候変動の問題、天然資源の枯渇、使用済み製品の大量廃棄による環境破壊が起き、異常気象や一般消費材の値上げなど多くの人にとって身近な課題となっています。そして今後、世界人口の増加や開発途上国を含めた世界全体の経済活動が盛んになることにより、こうした問題は更に深刻化し、我々の生活環境や経済成長に深刻なダメージを与えると予測されています。
そこで、捨てるという概念が無い自然の生態系サイクルのような「サーキュラーエコノミー」という、新しい概念が注目されています。これは、資源や製品の循環を通して環境への負荷を減らす「循環型社会」の実現・維持に加え、今ある資源を最大限活用してさらなる付加価値を生み出し、経済成長も同時に実現しようという考え方です。

出典:「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(環境省)」を加工して当社作成
1982年、帝人ファーマは日本初の在宅酸素療法事業を開始しました。現在もパイオニアとして国内で高いシェアを誇っており、帝人ファーマの主要な事業となっています。
在宅酸素療法とは、酸素濃縮装置などを使って自宅で酸素を吸入する治療法で、これによって患者さんは入院の必要性から解放され、症状が改善された場合には外出なども可能になり、生活の質の向上につながっています。
「直販体制」を持つ帝人ファーマの在宅医療機器事業では、より安心・安全なサービスを患者さんに提供すべく、患者さんと医師のご要望に真摯に対応すると共に、装置がより良い状態で長く使用できるよう、一つ一つの部品を大切に扱って社内で徹底したメンテナンスを行っています。この取り組みにより、部品や製品を安心してご使用いただけています。
このように、患者さんの安心・安全のために帝人ファーマが行ってきた「徹底したメンテナンス」は資源の最大限の活用と経済を両立する “サーキュラーエコノミー”に繋がる取り組みだったのです。


酸素濃縮装置は、より良い状態で長く使用して頂けるよう、メンテナンスだけではなく、患者さんの要望に応えるべく「より便利で、より使いやすい」設計変更も続けられています。
社団法人日本呼吸器学会が発行する「在宅呼吸ケア白書2010」によると、「約2割の患者さんは通院以外では外出しない」とされており、その主な理由として「酸素ボンベの重量(携帯用キャリーバッグ含め、約4kg)」(約68%)や「外出中に酸素が足りなくなる不安」(約46%)が挙げられています。
そこで、外出時に持ち出せる酸素濃縮装置として、装置の軽量化やバッテリ運転を可能にする省エネ化に取り組み、携帯型機器を上市しました。その結果、原料使用量/消費電力量の低下による炭素排出量の削減に寄与する結果となりました。
この、帝人ファーマが行ってきた患者さん想いの設計もサーキュラーエコノミーに繋がっている取り組みと言えます。


時代は”サーキュラーエコノミー“への転換期を迎えています。
そこで今回、 “サーキュラーエコノミー”という新しい概念のもと、患者さんを第一に考え開発、生産、販売を続けてきた「酸素濃縮装置」を改めて見直してみました。その結果、本事業の取り組みが、実は“サーキュラーエコノミー”に繋がる取り組みだった、と気づくことができました。
帝人ファーマは、帝人グループが目指す「未来の社会を支える会社」になるべく、これからも患者さん想いの価値観を軸として、社会課題の解決にも取り組んでいきます。

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